マイケル・ジャクソン「30周年記念ソロ・イヤーズ」コンサート 写真:Globe Photos/アフロ

(小林偉:放送作家・大学講師)

きっかけは女性ファンの行動から?

 今回は、前回の続きということで、よく歌詞を聴いてみると、実は怖~いことを歌っている洋楽ヒット曲のご紹介です。

 最初はご存知“キング・オブ・ポップ”の、こちらの曲。

●BILLIE JEAN/MICHAEL JACKSON

 マイケルがムーンウォークする際の定番BGとしても知られている「ビリー・ジーン」は1982年11月にリリースした、超特大ヒットアルバム『スリラー』から最初にシングルカットされた曲。もちろん、全米ヒットチャート1位に輝いています。

 そんな超有名曲ですが、歌詞の内容は、かなり変わっているんですよね。

 冒頭から、訳していきますと・・・「その娘は映画スターよりキレイだけど、そんなことどうでもいい。彼女のダンスの相手が僕しかいないって言っているのは、どういうことなのかワケ分かんないよ」「突然、現れた彼女はビリー・ジーンと名乗った。彼女のダンスの相手をしたがった奴らは、一斉にこっちを振り向いたりしているし」

 という具合に、自分(マイケル)の前に現れたビリー・ジーンと名乗る女性を懐疑的に眺めているような歌詞から始まります。そして・・・

「僕は皆に言われていたんだ。“自分の行動には気を付けろ。若い女の子を泣かすんじゃないぞ”って。ママにも“恋人を選ぶときは慎重にね。嘘がいつの間にか真実になったりするから”っていつも言われていたんだ」 

 と、マイケル自身の事情を正直に吐露した後、サビは・・・

「ビリー・ジーンは、僕の恋人じゃない。あの子どもは僕の息子だと言い張るけど、違う、ただの子どもだ!」

 ・・・と、かなり変わった歌詞になっています。

 何で、こんな歌詞なのかというと・・・実は当時、マイケルの長兄であるジャッキーのところへ、ある子ども連れの女性が訪れ「これはあなたの子です」と訴えてくるという騒ぎがあったことが、彼にこの歌詞を書かせた発端。さらに同じ頃、マイケルの自宅に女性ファンが勝手に入り込んで、プールでくつろいでいたという事件もあって、熱狂的な女性ファンに対してかなりの恐怖心を抱いていたこと。また、当時のアメリカ黒人社会では、若年女性の妊娠や、それに伴う若年男性の認知拒否が問題となっていたことから、この歌詞が完成されたようなんですよね。

 しかし、何でこんな内容の歌詞の曲で、ムーンウォークしていたのかは謎です・・・。