「世界中で最も嫌われている女性」カミラ
皇太子夫妻の2度目の来日は1990年11月。現在の上皇さまの天皇即位の礼への出席だった。そのとき私は、英連邦王国の一つであるカナダの在日大使館からの依頼で夫妻の撮影をした。
横浜の外人墓地にある英国人墓地に献花に訪れた皇太子殿下は、まさに典型的なイギリス貴族という風貌だった。シックなダークスーツに包まれたすらりとした長身、きちんと整えられた短めの髪、骨ばった高い鼻、わずかに赤みを帯びた顔。隣に並ぶダイアナ妃もすらりとした長身に金色に輝く髪。見事に絵になる二人だった。
二人は出迎えたカナダ総督と握手をし、石碑に花を手向けた。
その時違和感を覚えたのは、二人の表情が硬かったことだ。チャールズ皇太子は僅かに微笑まれたが、皇太子妃はニコリともしなかった。さらに一同が俯いて静かに黙とうをささげている時、ダイアナ妃だけが心ここにあらずという風にそわそわと落ち着きのない目を虚空に走らせていたのも驚きだった。
後に明るみに出たところによると、その頃既にお二人は別居状態で派手なバトルの最中だったらしい。原因はチャールズ皇太子の不倫だ。
その後、夫妻は1992年に正式に別居を発表、1996年8月に離婚が成立した。このときのエリザベス女王のお気持ちは王室の長として、またひとりの母親として、いかばかりだったかと思うが、王室の一員だからといって個人の感情を犠牲にする時代ではない。
そして離婚から一年後の1997年8月、ダイアナ元妃の事故死という衝撃的なニュースが飛び込んできた。人々のやり場のない気持ちの矛先はチャールズ皇太子と愛人といわれたカミラ夫人に向けられた。ダイアナ元妃の死後、チャールズ皇太子は公の場にカミラ夫人を伴ったが、人々の二人を見る目は冷たかった。とくにカミラ夫人は、「世界中で最も嫌われている女性」とも言われた。