(福島 香織:ジャーナリスト)

 先週まで台湾に取材に行っていたのだが、その時、テレビのワイドショーで繰り返し話題になっていたのが、台湾企業家の曹興誠(ロバート・ツァオ)が個人資産を投じて民間防衛体制を強化すると発表したニュースだった。

 彼は台湾で最初の半導体企業、聯華電子(UMC)の創業者で、ファウンドリー(半導体製造)企業のTSMC(台湾積体電路)会長・張忠謀とともに台湾半導体産業勃興期を作り出した双璧ともいえる人物である。中国大陸で2番目に大きいファウンドリー企業、蘇州和艦はUMCの子会社であり、張忠謀とのライバル関係は、周瑜と諸葛亮にたとえられる。そして、外省人であり、米国帰りであり、1990年代に中国大陸に台湾半導体産業を移転しようと考えて率先して投資してきた人物で、かつては中台統一派であった。

 すでにUMCの役員を引退した身なので、ただのご隠居の放言と言えるかもしれないが、大陸ビジネスで成功を遂げた、かつての統一派の代表格の人物が、9月1日、防弾チョッキに身を包み記者会見を開いて、2011年にシンガポールのパスポートを申請するために放棄した中華民国籍を取り戻したことを明らかにし、どのように中共の侵攻に対応すべきかを熱く説いたのは、絵面的にも印象深いものだった。

聯華電子(UMC)の曹興誠(ロバート・ツァオ)名誉会長。Rti(台湾国際放送)によるインタビュー映像より

「中国共産党の侵略から国土を守る」

 彼はすでに30億ニュー台湾ドル(約135億円)で国防基金を創設すると発表していたが、さらに6億ニュー台湾ドル(約27億円)を投じて3年内に民間の防衛組織「黒熊勇士」300万人を育成し、これとは別に4億ニュー台湾ドル(約18億円)を使って民間射撃手「保郷神射」30万人以上を育成するといった、「国防計画」を語った。

「そして、すべての勇敢な台湾同胞とともに、中国共産党の侵略に対抗し国土を守り、台湾を永遠に米国とおなじく自由の地、勇者の故郷とするのだ」と語った。