中国のネットには小学校の国防教育の映像が流れているが、赤い星のついた迷彩服で国防ダンスを踊る幼いわが子の姿をみて、親たちが涙をぬぐっている様子が印象深い。長年の一人っ子政策のせいで、多くの親たちにとって子供は一人。すでに戦場に送ることを想像しているのだろうか。

 上述の「意見」では社会各層の支持、協力要請が盛り込まれているが、これは今後、中国の企業に対する強軍化協力義務などに発展する可能性がある。こうした義務を外資企業、民営企業が免除されると考えるのは甘いだろう。

 こうした国内のムードをみるに、党大会後、習近平政権が3期目をスタートすると、その任期継続の正統性をアピールするために「強軍」と「祖国統一」を全面に打ち出すことになろう。今年の徴兵(兵役募集)は大学生、大卒生も対象で、大卒生の就職難を利用して、優秀な理工系の学生を徴兵したい当局の考えが反映されている。中国の若者の憐れなところは、祖国を守るために戦うのではなく、他国を侵略するために戦争に行かされるかもしれないという点だ。

 このように中国も台湾も、若者が戦争に行くことを結構リアルに考え始めているのかもしれない。「台湾有事は日本の有事」と考えるならば、当然、日本もそういうことを考えなければいけないのだが、日本人はウクライナ兵士と市民のロシアへの激しい抵抗の映像をみても、いまだピンときていないかもしれない。

 日本には、曹興誠のように私財を投じて民間防衛力を育成しよう、と言い出して、社会に賛否両論の議論を引き起こしそうな人物も見当たらないし、そもそも、そういうアクションを起こせるような大富豪もほとんどいないのだった。そして私のような一介の記者がこのような記事を書いても、単に戦争を煽っているネトウヨとみなされ、嘲笑されるだけなのである。