しかもエンゼルスには今後、ポストシーズン進出を狙っていけるような常勝チームに変貌を遂げる上で致命的な欠陥もあるのだ。それは、強豪球団のヒエラルキーとして欠如は許されないはずのマイナー組織が、悲しいぐらいに脆弱であることだ。

大谷の存在は強みだが、それ以上に多い弱み

 実際、MLB公式サイトで8月22日に発表されたばかりのファーム組織ランキングでもエンゼルスは30球団中30位に沈み、最下位の烙印を押されてしまった。これまでもエンゼルスの下部組織は評価が低く、今季開幕前の同ランキングでも28位だった。プロスペクトの層がMLB30球団の中でも非常に薄く、同球団マイナー組織の中でプロスペクト上位になるのはほぼ決まって他球団からのトレードやドラフトで指名した新加入選手ばかりという深刻な育成力不足にさいなまれている。

 事情通もこう語る。

「エンゼルスはメジャー、マイナーともに低迷している。大谷の存在が大きなストロングポイントとなるのは言うまでもないが、他はいわば穴だらけで数多くの箇所にメスを入れなければならない組織を買収しようとする酔狂な新オーナーが果たしているのかどうか。

 加えてどれほど優秀な新オーナーと新GMがエンゼルスに来たとしても、マイナー組織まで激変させなければならない点を考慮すれば、仮に結果を出せるとしても数年先を見なければならない。

 昨シーズン終盤に自らの胸の内を公言した通り『勝てるチーム』になる見込みがないと判断すれば、大谷は新オーナーからいくら大金を積まれても来オフにFAでエンゼルスに別れを告げることになると思う。これは今まで大谷の性格を知る近い筋から幾度となく出ている話だが、彼の求めているものは『カネ』ではなく『勝利』。2023年シーズンで30歳を迎える大谷には当然、ワールドシリーズ優勝を果たしてチャンピオンリングを手にするためにもトップアスリートの円熟期に入っている今を無駄にしたくないという思いがある。

 これらの観点を総合すれば、おのずと大谷が下す結論は見えてくるような気がする」

 新オーナー就任発表のタイミング次第だが、放出反対のスタンスだったモレノオーナーが球団を去ることで大谷には今オフ、あるいは来季中のトレード話も再燃してくるだろう。

 いずれにしても、大谷とエンゼルスの「別離」は刻一刻と現実化する日が近づいていると言えるかもしれない。