新オーナーの下でエンゼルスは「勝てるチーム」に変われるか

 新オーナーの決定時期は今のところ未定だ。ただ、エンゼルスがモレノオーナーによって球団売却へと舵を大きく切ったことで大谷の去就の行方は必然的に新オーナーの方向性がカギを握る流れになる。

 米紙「ニューヨークポスト」など一部のメディアからは、新オーナーは大谷の残留へ向けてへ5億ドル(約682億円)もの巨額資金を投じ、大谷自身が強く希望する「勝てるチーム」作りを必ずや実現させると約束した上でトラウトと同様に「生涯エンゼルス」を決断させるのではないか、との見解も出ている。

 とはいえ、今のエンゼルスをポストシーズン進出、ひいては2002年以来2度目のワールドシリーズ優勝も狙える強豪チームにまで再建させるのは、これから就任する新オーナーにとって至難の業だ。

 31歳のトラウトは2030年まで、32歳のアンソニー・レンドン内野手も2026年までそれぞれ巨額複数年契約を残しているが、今季含め直近3シーズンをまともに働けていない現状を鑑みれば今後も不良債権化する危険性は排除できない。ここ3シーズンにわたって故障離脱を繰り返している2人のベテラン主力が急にパフォーマンスを向上させ、変貌を遂げるとは年齢面と照らし合わせても考えづらい。トラウト、レンドンが今後も同じように中途半端な成績しか残せないとなれば、エンゼルスが大きく変わることはないだろう。

 ただ、エンゼルスの新オーナーが2020年オフにメッツを買収したスティーブ・コーエンオーナーのような超資産家であれば、たとえトラウトとレンドンに足を引っ張られかけてもチーム強化と大谷残留の両立を図れるかもしれない。

 ヘッジファンドで総資産145億ドル(約2兆円)を築き上げ、2016年に「フォーブス」で全米30位の富豪にランクインしたコーエンオーナーは「メッツファン」を自負し、球団改革に着手すると莫大な資金を投じる大型補強と贅沢税支払いもいとわず今季のチームはナ・リーグ東地区首位の座をキープ(8月24日現在)している。

 ただ、そんなコーエン氏のような無尽蔵に巨万の富を誇る“レア”な「エンジェル」がエンゼルスを買収する新オーナーとして本当に現れるか――。正直に言って、現実的にはあまり期待できそうもない。