(市岡 繁男:相場研究家)
人口増以上に穀物生産は増加してきたが
スイスに本部を置く民間シンクタンク、ローマクラブが1972年に報告書「成長の限界」を出してから今年で半世紀が経過しました。
世界が注目し、今でもしばしば引き合いに出される報告書で指摘されているのは、爆発的に増えていく人口に対し、食糧の増産は追いつかず、もともと有限である石油などの資源は減り続けるということでした。
報告書が出された1972年当時の世界人口は約38億人です。それが国連の推計によると今年11月中旬には80億人に達するそうです。この50年間で世界の人口は2倍を超える規模に成長しました。
では、ローマクラブが指摘したように、食糧や資源の不足によって「限界」に近づいているのでしょうか?
たしかにアフリカなど場所によっては食糧難・飢餓の問題が解消したとは言えません。貧困問題も残っています。しかし、世界全体で見ると、異なる様相が浮かび上がります。
石油は何度も枯渇の危機が叫ばれながら、海底油田やシェールオイルの開発などで埋蔵量が増えてきました。食糧も同様で、人口の爆発に負けずに潤沢に供給されてきました。
下の図1を見てください。倍増した人口によって、1人あたり生産面積が半減したのに対し、単収(単位面積あたりの収量)を大きく伸ばし、小麦など穀物の生産高は人口以上のペースで増加してきたのです。
*本記事には5つの図表が含まれています。配信先のサイトで表示されない場合は、こちらでご覧ください。https://jbpress.ismedia.jp/articles/gallery/71415