(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)
ウクライナ、ロシア、トルコ、そして国連の4者の合意により、ウクライナからの穀物輸出が再開されました。
しかし現状では、ウクライナを出港した船は、ロシアの攻撃によってウクライナの港に足止めを喰らっていた船舶が積み荷を積んで脱出したものがほとんどです。また、運航している船舶も、穀物を積載できるバルク船(ばら積み貨物船、撒積貨物船)に限られ、足止めされ続けている船舶もあります。8月6日には、穀物を積み出すための船舶が初めてウクライナに到着しましたが、情勢は不安定だと言わざるを得ません。
合意の翌日には、ロシア軍がオデーサをミサイル攻撃しています。これは恐らくロシア政府・軍内の情報伝達ミスですが、そうした事故は今後も起きかねません。ロシアが翻意し、合意を無視して攻撃する可能性もあります。
ウクライナからの穀物輸出再開は、ウクライナがロシアの侵略を撃退する上でも重要ですし、食料を必要としている多くの国にとっても重要です。
以下では、このウクライナからの穀物輸出が安定して継続されるのかを検討するとともに、どのような課題があるのかを整理してみます。