きょう(8月11日)は「山の日」。北海道から沖縄まで全国各地の山で多くの人が登山を楽しんでいるだろう。苦難の末にたどり着いた山頂でひと休みし、景色を眺めるひととき。登頂の達成感、絶景堪能の感動は日常ではなかなか味わえないものである。標高3776m、日本一高い富士山で迎える神秘的なご来光は、まさにその代表だろう。
世界遺産にもなった富士山には、多い年では年間30万人以上、少ない年でも20数万人の登山者が訪れる。夏休み中の登山道は行列ができ、前後の間隔がなくなり、しばしば立ち止まらなくてはならないこともある。八ヶ岳の麓から夜中に富士山を眺めると、山頂を目指す登山者のヘッドライトの光の帯を確認できるほどだ。
開山日から1カ月弱で22件の遭難が発生
そんな人気の山で、今年は遭難が相次いでいる。富士宮口、御殿場口、須走口と3つの登山口がある静岡県側では、7月10日の開山日から8月8日までに22件(23人)の遭難が発生した(静岡県警地域課まとめ)。幸い死者はなく、負傷者も4人にとどまっているが、一歩間違えば大変なことになる。今シーズンの遭難例をこれまでの報道からいくつかピックアップしてみよう。
【8月4日】「富士登山に出かけた母親が下山できなくなっている」と迎えに来ていた娘から通報。山岳遭難救助隊員が下山中に疲れて歩けなくなった78歳の女性を見つけ背負って下山した。息子と一緒に下山していて、息子からも通報があった。
【8月7日】5日から単独登山中の71歳の男性。2泊3日の予定で、6日に登頂し、その日は山小屋泊まり。7日朝から下山を開始したが、富士宮口6合目付近(標高2500m)で疲労による足のもつれで動けなくなり、近くの山小屋のスタッフが救助を要請。山岳遭難救助隊員の肩を借りて下山した。
【8月8日】午前9時半過ぎ、須走ルートの7合目付近(標高3200m)で「両ひざが痛くて歩けなくなった」と40歳男性から消防に通報。山岳遭難救助隊が山小屋に資材を運ぶ民間のブルドーザーに救助を依頼し、男性はブルドーザーで須走口5合目まで運ばれた。男性は2人の子どもと7日午後9時ごろから登り始めたものの、疲労で登頂をあきらめ下山中だった。
20代のケースもある。
【8月7日】母親と2人で6日昼から登山中だった27歳の男性。9合目の山小屋に宿泊中に体調不良を訴え、38度台の発熱。7日朝、母親が山岳遭難救助隊に連絡。コロナ感染の疑いもあるため隊員が抗原簡易キットで調べたところ陰性の判定結果だった。救助隊は男性と下山し、富士宮口5合目で消防の救急隊員に引き継いだ。