ニブさとユルさで100年時代を生き抜け

 起業に関するある調査では、50歳以上の中高年のおよそ28%が「起業に興味がある」と述べた。さらに、そのうちの3割近くが「3年以内に起業したい」と話している。

 しかし、素人のMさんが、本当にドローンの会社など作れるのだろうか。ネットを見ると個人でドローンの仕事を引き受けている人は、掃いて捨てるほど出てくる。

 すでにドローンを使って撮影の副業をしているという30代の男性に話を聞いたところ、こんな回答だった。

「私の場合、ドローンで得られる年間収入はせいぜい30万円程度。会社を作っても、そこまで収益が得られると思えません。そもそも最近のドローンは性能が非常に良く、10時間くらい動かせば、誰でも車の運転レベルに達します。もし農薬散布や測量の分野で仕事をするとしても、現場の人が訓練すればいいだけの話なので、わざわざ外注するでしょうか」

 この30代男性の知人にも、ドローンの会社を立ち上げた中高年がいたが、仕事が少なくて数年後には倒産したという。

 そもそもMさんは一生懸命ドローンの練習をしているが、なかなか上達しないようだ。

「まだドローンが怖いんだよね。車と違って宙に浮いているから感覚がつかみにくい。回転すると、いきなり操作が逆になるから」

 せっかくお金をかけてドローンスクールに通い、ドローンを購入しても、徒労に終わるかもしれない。しかし、「何かしたいけれど行動に移せない」という中高年も多い中、たとえ思いつきでも動き出したMさんのバイタリティは素晴らしいとも思う。

 ベストセラーになった『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 100年時代の人生戦略』には、これからの人生には「実験」が必要だとある。

「実験を通じて、何が自分にとってうまくいくのか、(中略)何が自分という人間と共鳴するのかを知る必要がある」(『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』)

 実験には失敗がつきものだ。そこでいちいち心が折れていては、100年も生きていられない。Mさんなら、たとえドローンがうまくいかなくても、クラブホステスやセラピストの送迎を、楽しんで続けるのではないか。100年時代のおじさんは、それくらいのニブさとユルさも必要だ。

 Mさんのドローン計画が無事に大空へ飛んでいくのか、今後の報告を待ちたい。

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