堀ちえみに憧れたバブル組の今
Mさんは、コンサートなどのイベントで電飾の機材を設営・搬入する会社に勤めている。コロナで多くのイベントが中止になり、Mさんは会社から給料の減額を言い渡された。年収は、700万円から600万円にまで落ち込んだという。
「小さい会社だから、社長を除くと私は上から2番目に給料が高い。住宅ローンは65歳まであるのに、60歳を過ぎたら嘱託扱いになるから、もっと給料が下がっちゃう。定年までに何とかしなきゃいけないなと思って、今動いているんだよね」
もともとアイドルの堀ちえみや石川秀美の大ファンで、「芸能人に会えるかも」と今の会社にアルバイトで入った。そして、働きながら技術を習得し、いつの間にか社員に昇格。現在は現場の総指揮や若手の育成を担うゼネラルマネージャーという立場だ。
それにしても、なぜドローンなのか。
実は、これまでにイベント会場でドローンが飛んでいる様子は何度か見てきたが、それを仕事にしようと思ったことはなかった。そのMさんがドローンで起業しようと思いついたのは、半年ほど前、自宅近くにドローンスクールがオープンしたことがきっかけだ。
「ドローンの看板を見た時に、なんとなくドローンについて調べてみたの。そうしたら撮影以外に農薬の散布や測量など、いろんな用途があることが分かって。ドローンが使えたら、いろんな仕事を引き受けるビジネスができるんじゃないかと思ったんだよね」
最近まで、ドローンを飛ばすには主に場所の規制があるだけで、ドローンの所有や操作に対する規制はなかった。
それが、今年6月から100g以上のドローンは国土交通省に機体登録が義務づけられるようになった。さらに、2022年度中に「レベル4」と呼ばれる高度なドローン操作は、国が操縦ライセンスを創設することになっている。
Mさんは「国家資格が普及する前に、ドローンが操縦できるようになれば有利なんじゃないか」と思ったそうだ。
意気揚々と話すMさんに、これまでドローンを扱った経験があるのかと聞いてみると、「初めてドローンを触ったのはつい先月」とのこと。30万円を払ってドローンスクールに通い始めたMさんは、さらに10万円ほどかけて小型ドローンを2台購入した。
そして、Mさんは起業資金を稼ぐため、夜のレンタカー店で副業を始めた。