結果として高まったロシアへのガス依存

 バイデン大統領は2019年に「化石燃料を終わらせる」と約束した。この約束は、米国の石油、ガス、石炭の膨大な埋蔵量を考えれば、ロシアやサウジアラビアが同じことを約束するのとほとんど同じ意味を持った。バイデン大統領はカナダの油田と米メキシコ湾岸の製油所を結ぶキーストーンXLパイプラインを就任初日に阻止するなど、米国の石油・ガス開発を妨げてきた。

 欧州は「ネット・ゼロ」を掲げ、温室効果ガスを排出する石炭、石油の利用を減らし、また足下にあるガスの採掘もしなかった。それに代えて再生可能エネルギーを導入したが、十分ではなく、結果としてロシアのガスへの依存がどんどん高まった。

 米欧がこのようなエネルギー政策を取った結果、世界の石油・ガス価格は2021年に高騰し、ロシアは潤沢な資金を得て、対ロシア依存という脆弱性を抱える欧州の足下を見てウクライナ侵攻に踏み切った。

 いまになって、欧州は慌ててロシア依存を脱しようとして、世界中からガス、石油、石炭を買い漁っている。だがこれは、ランド研究所が提言したように、戦争を招く前にしておけばよかったことだ。

 時すでに遅し、である。