20世紀末頃から完全分業化が進み、2020年には院外処方が75%にまで拡大した。だが、その間に門前薬局などの新たな利権が生まれた一方、肝心のダブルチェックが十分機能しているかは相変わらず疑わしいままだ。
大学と医薬、二つの構造改革が必要
この長年の懸案だった医薬の構造問題をデジタル社会で解決できる可能性がある。これからの社会では「数か月にいちど通院して薬を処方してもらう」形態から「日常的に自宅で健康データを計測して関係機関と共有し、必要なタイミングで必要な薬の処方・変更がなされる」形態への移行が可能になるからだ。
新たな形態では、投薬後の効果・副作用の継続的評価、これを踏まえた医師へのフィードバックなどで薬剤師がこれまで以上に役割を果たし、より適正な処方・治療・予防を実現し、国民の健康増進を実現できるはずだ。そうした新たな医薬分業モデルの構築を急がなければならない。
一方で、これまで薬剤師の役割の多くを占めた調剤業務は抜本的に効率化できる。処方箋のやりとりや調剤・袋詰めはICTやロボットで相当程度代替可能だ。以前から調剤業務を調剤センターに集中して効率化を図る構想があったが、規制の壁(調剤の外部委託の禁止、処方箋一日40枚を上限とする規制など)で阻まれてきた。規制改革を進めることで、薬剤師の役割をより高度な業務にシフトし、調剤コストを下げて医療費削減も実現できるはずだ。
本当の課題は、大学と医薬という二つの巨大な構造の改革だ。これらから目を背け、現状を前提に「薬剤師が余るから薬学部新設禁止」などといっているのは、およそ論外というほかない。