ウルトラシリーズとウルトラマン
ウルトラマンより前に「ウルトラQ」(1969。以後「Q」と略す)というテレビ番組が放送されていた。
子供向けとして作られた初代マンに対し、Qはいささか大人向けのリアル路線で(もちろん子供向けの作品も複数作られている)、小気味よいSF短編小説を読んだかのような視聴感覚を与えてくれる作品が多い。
初代マンはQ的な世界に、巨大宇宙人ヒーローと言う前例のない主人公を登場させた。そうすることでバラエティ豊かな怪獣と宇宙人が毎回現れて、目一杯派手なアクションを展開する様式が生み出された。
どちらも同種の怪獣や宇宙人がいくつか登場するものの、両者の世界観は微妙にズレているようである。それもそのはず、Qを作り始めた時は、初代マンを作る予定など考えていなかっただろうから、次回作に連なる布石を仕込んだりなどしていなかった。
デザインがそっくりなのに設定がまるで違うQのガラモンと、初代マンのピグモンが同じ世界にいるのは無理がある。Qのセミ人間と初代マンのバルタン星人が、両者とも同じ顔面を持つのも不可思議である。それにQに登場するゴメス(身長10M)やゴーガ(身長20M)
また、「育てよ!カメ」「クモ男爵」「地底超特急西へ」のような特殊な作風は初代マンと絡みづらい。なによりQの世界で「科特隊」らしき存在が影も形も見せることなく、官民の人々が現実的な技術で悪戦苦闘しているのもおかしな話である。そういうところを考えていくと、やはり両者の世界観が共通しているとは考えにくいのである。
とはいえ、初代マンでは何の説明もなく、Qに出てきた怪獣や宇宙人が周知されている描写もある(ラゴン、ケムール人)。この辺り、はっきり言って“とても緩い”のだ。初代マンの世界はQの世界を踏襲するところと、わざと切り捨てたところがある。ここは視聴者が空想で自由に接続したり、切り離したりして、好きに楽しむべきなのだろう。
だからQと初代を見る時は、独立する作品世界として鑑賞してもいいし、連続する作品世界として楽しんでもいい。こういうところも含めて「空想科学シリーズ」なのだ。
ところでQと初代の関係よりももっと面倒な問題がある。初代マンとその後のウルトラシリーズの関係である。