ブラックホール撮像がなされた国際共同研究プロジェクト「EHT」(イベント・ホライズン・テレスコープ=事象の地平線望遠鏡。世界の8つの電波望遠鏡をつなぎ、直径1万キロアンテナに相当する視力を出す)では、参加電波望遠鏡の1つとして、国立天文台などが建設した南米チリの「人類最強の電波望遠鏡」アルマ(標高5000mのチリ・アタカマ高地に66台のパラボラ・アンテナを展開し、最高視力6000と、従来の電波望遠鏡に比べ30~100倍の感度を持つ電波望遠鏡)が中心的役割を果たしました。私も野辺山宇宙電波観測所の所長を引き受ける前の16年間はアルマ望遠鏡の建設・運用に関わっていました(国立天文台ALMA推進室長、2008~2012年)。
EHTによって、電波望遠鏡の視力がブラックホールに撮像に必要な視力300万(!)に達したときに、幸運なことに撮像できるブラックホールが2個も(!)あったのです。1個だけだと、非常に特殊なものの可能性もありますが、2個観測できることにより、ブラックホールの物理をより普遍的に語れることになったのです。そして、アインシュタインの相対性理論(より正確には一般相対性理論)の予測とぴったり合っており、その正しさがより強く立証されたわけです。
また、比較研究はどの学問でも極めて重要ですが、2天体の比較により、今後のより詳細な研究により、まだよくわかっていないブラックホールに「モノ」が吸い込まれる様子の理解が進展することが期待されます。
あの穴の半径はシュヴァルツシルト半径?
「シュヴァルツシルト半径」というのを聞いたことがありますか? ない方が多いかもしれません。
ドイツの天文学者、カール・シュヴァルツシルトが、1916年、相対性理論のアインシュタインの重力場方程式の解(とっても難しい)から光も脱出できなくなる領域があることを発見。彼の名にちなみ、その半径を「シュヴァルツシルト半径」と呼ばれます。きわめて高密度になり、光が脱出できなくなった天体がブラックホールです。まあ、ごく簡単に言うとブラックホールの穴の半径です。
さて、ウルトラマン銀河M87や今回の天の川銀河で撮影されたドーナツ状のリングの穴(「シャドウ」と呼びます)は「シュヴァルツシルト半径」と同じなのでしょうか?