欧州への旅が始まった同胞を思うと胸が痛む

 ボランティアはシェルターを手配し、親切な警察官がパトカーで迎えに来てくれた。ポーランドではウクライナ人なら誰でも必要なだけ滞在できる場所を探す手助けをしてくれる。シェルターは大きなスポーツセンターの中にあった。担架のような簡易ベッドは床に置かれ、トイレ、シャワー、台所、ベッドシーツが利用できた。

「シェルターでは戦争のためウクライナのさまざまな都市から逃れてきたウクライナ人がいた。彼らの話に耳を傾けた。彼らの話を聞けば必ず涙をこぼすだろう。ウラジーミル・プーチン露大統領とロシア軍が罪のない人々にしたことを憎むはずだ」

 シュマトクさんはウクライナ北東部ハルキウから逃れてきた70歳超の男性に出会った。

シュマトクさん(左)はロシア軍の爆弾から逃れてきた70歳超の男性と出会った(シュマトクさん提供)

「彼は自分の通りや広場、自宅に爆弾が落ちてきた時の様子を話してくれた。すべてを捨てて逃げ出さなければ助からなかったそうだ。他にも戦争を実感している人、次にどこへ行けばいいのか分からない人、いろいろな国のこと、そこでの生活を聞いてくる人など、たくさんの人に出会った」

 ウクライナ国外を自由に移動でき、暮らせる自分の境遇に感謝した。

 シュマトクさんはシェルターで一晩を過ごし、翌朝ワルシャワに向けて出発した。9日に格安航空でイングランドの自宅に戻ってきた。「すべてのウクライナ人はポーランドの人々が示してくれた温かさに永遠に感謝するだろう。私たちは困難な時に差し伸べられた助けの手を決して忘れない」と言う。

 欧州の旅が始まったばかりの多くの同胞のこれからを思うとシュマトクさんの胸は痛んだ。「独裁者プーチン」が領土的野望を捨てない限り、ウクライナ戦争が長期化するのは避けられない。プーチン氏の野望を打ち砕き、ウクライナが勝利するまでシュマトクさんが出会った人々の多くは異国の地で過ごすことになる。

(「露軍に銃口を向けられても飼い主失った動物と過ごす選択をしたウクライナの母」<https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70027>に続く)

・シュマトクさんが立ち上げたウクライナの街ブチャを再建するチャリティー「ブチャ人道復興財団」
https://www.buchafoundation.org/

・アレクサンドル・シュマトクさんの連絡先
alex.shmatok@gmail.com