(姫田 小夏:ジャーナリスト)
今なお続く中国・上海のロックダウン。食料品や病床などの枯渇が懸念される中、4月中旬、上海市が打ち出した政策に大ブーイングが起こった。出稼ぎ労働者を含む外省出身者を郷里に送り返すという愚策に、またしても居住者が振り回された。
上海で行き場を失う外省出身者
上海市の人口は約2500万人。そのうち約1000万人が出稼ぎ労働者を含む、都市戸籍を持たない“外省”の出身者だ。
ロックダウンのしわ寄せは、このような上海経済の底辺を支える人々にも及んでいる。
上海では、全面ロックダウンによって行き場を失う外省出身者が続出した。働いていた食品市場が閉鎖されて野宿する熟年労働者。雇い主が隔離施設に入れられ、電話ボックスで雨露を凌ぐ住み込みの家政婦。工事現場にたった1人取り残された作業労働者もいた。
2年前の武漢ロックダウンの際も、こうした人々が現れた。当時、ボロボロの衣服で、真っ黒に汚れたマスクをつけてさまよう少年の動画がネット上で拡散された。都市の経済活動が止まり、移動が禁じられ、宿泊施設も閉鎖されたことで、出稼ぎ労働者がホームレス化してしまうのだ。