3.ロボット僚機の開発状況
軍用無人機は、用途により、無人攻撃機、無人偵察機、無人警戒監視機などに分類される。上記の用途に用いられる無人航空機は既に実用化されている。
だが、無人で空中格闘戦などの制空戦闘を行う無人戦闘機(UCAV:unmanned combat air vehicle)の研究が各国で続けられているが、いまだ構想段階にある。
現状では制空戦闘を行う無人戦闘機の開発が難しいため、先進各国では有人戦闘機と協働し、有人戦闘機を支援する無人機(以下、ロボット僚機と呼ぶ)の研究開発に取り組んでいる。
「ロボット僚機」が促進される理由としては、
①有人戦闘機との役割分担でパイロットの負担を減らすことができる
②「ロボット僚機」の機能を空中給油や電子戦などの機能に限定すれば格闘戦などの戦闘よりは単純な動きになるので技術面、経費面で開発が容易となるなどが考えられる。
だが、「ロボット僚機」には自己判断を行える高度な人工知能(AI)を搭載した自律戦闘能力が求められている。
各国の人工知能(AI)の開発状況については、拙稿『中国と米国のAI開発競争、勝つのはどちらだ』(2021年11月5日、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67607)を参考にされたい。
(1)各国の開発状況
現在、開発中のロボット僚機は次の3機種である。
1つ目は、豪空軍とボーイングが開発するAIを搭載した無人機「Loyal Wingman(ロイヤル・ウイングマン)」である。
ロイヤル・ウイングマンのプロトタイプが2021年2月に、初飛行に成功した。
ロイヤル・ウイングマンは、全長11.7メートル、航続距離は3700キロ以上で、AI(人工知能)を活用し、ほかの有人機や無人機と連携しながら情報収集・警戒監視・偵察・電子戦などの任務を遂行するとされる。
ボーイングは2022年3月21日、ロイヤル・ウイングマンが「MQ-28A Ghost Bat(ゴーストバット)」と命名されたと発表した。
2つ目は、ロシアの「スホーイS-70 オホートニク-B」である。2019年9月27日、ロシア国防省は「Su-57」のそばを飛行するオホートニクの初飛行を紹介する動画を公表した。
ロシアのイタルタス通信は2021年6月、Su-57が合計で4機の無人ステルス機S70 オホートニク-Bを運用できるようにすると報じた。2024年に運用開始されると見られている。
3つ目は、米空軍が開発する「XQ-58A ヴァルキリー」である。
XQ-58は、親戦闘機によって制御される「ロボット僚機」として機能するように設計されており、偵察などの任務の実行、また攻撃された場合に敵からの攻撃を防御するとされる。
2021年3月26日、XQ-58Aは6回目のテスト飛行を完了し、内部の兵器ベイから、小型無人機システム「アルティウス-600(ALTIUS-600)」の発射に成功した。