猫の飼い主も論文執筆者の一人になるかも

――そうなると、飼い主さんたちも科学に貢献できることになりますね。

宮崎 新発見があれば、その論文には協力してくださった飼い主さんも著者に加わっていただくことになるかもしれません。前代未聞ですけれど、私はそれこそが「生きた学問」という気がします。

 通常、臨床研究では病院の患者さんたちのデータを研究者が集めることがほとんどですから、一般の人たちが観察した情報を学問にしていくのは学者の世界だけでやっているのではない、ある種、血の通った「生きた学問」ではないかと思います。

 現在、治療薬もデザインがほぼ完了し、試作がうまくいったら治験薬へという段階で、順調に進んでいます。はたして腎臓だけに効くのかそうでないか、私たちが予想している以上の効果があるのかなど、治療薬が実際に使われるようになってからも飼い主さんからのフィードバックがあると、さらに大きな発展を促すのではないかと思いますし、それは猫のためだけではなく、人間の薬の開発にも大いに役立ちます。

 たとえば、治験にもっていくターゲットが腎臓病か脳梗塞なのか、あるいは他の疾患で始める方がいいのかなど、大きなヒントになるでしょう。

 AIM研究は、多くの愛猫家の皆さんからの多くの寄付や応援があって、各方面が「本気」になったことで大きく前進しています。猫腎臓病治療薬の開発はゴールではなく、さらなる研究を進めていかなければならないと強く思っています。

*次回「ネコ腎臓病薬治療の宮崎徹教授、自ら研究所を立ち上げた理由」に続く

AIM治療薬は治験薬製造前の段階であり、現時点では治験の参加などは受け付けていない。

(編集部註)公開当初のタイトルに一部不正確な記述がありましたので修正しました(2022年4月20日21時45分)。