ロシアの戦車の天敵、無人攻撃機「MQ-9」(2021年9月9日撮影、米空軍のサイトより)

 21世紀の今日、戦車という兵器はすでに「弱い者いじめ」の道具にしかなっていません。なぜか?

 今日の「強者」、つまり高度に情報化された西側の兵器は、AIの指令誘導などで確実にターゲットを落とします。

 象徴的だったケースとして2020年1月3日に米軍によって暗殺されたイランの特殊部隊を率いた智将・ガセム・ソレイマニ司令官のケースが挙げられます。

 ソレイマニ暗殺に用いられたのは米空軍の軍事用ドローン「MQ-9リーパー」無人機でした。このドローン、巨大なミサイルを搭載して14時間、疲れを知らず飛び続けることができます。

 米軍の対戦車ミサイル「ヘルファイア」など、20世紀後半に開発されたインテリジェントな誘導兵器は、GPSを筆頭に冷戦後に発展した情報システムで命中精度を上げました。

 こうしたミサイルがMQ-9のような軍事用無人機に搭載されることで、冷戦後第2世代の爆砕精度は格段に上昇。

 さらに2010年代以降の第3次AIブーム、民生では「自動運転車」と喧伝された機械学習技術を吸収して、冷戦後第3世代の「スマート兵器」は、ピンポイント攻撃力をケタ違いに強化した。

 それを2020年の年頭に見せつけたのが隣国イラクのバクダード国際空港近郊を走行中の自動車をターゲットとしたソレイマニ司令官爆殺であったことは、リアルタイムで本連載にも記しました。

 これに対して「戦車」にはどのようなイノベーションがあったのか?

 実は、ほぼ、何もなかったんですね。後述する通り冷戦中期、1970年代で実質、軍事イノベーションがストップしていた。