択捉島を訪れロシア領をことさら強調してみせた元大統領のドミトリー・メドベージェフ(2019年、写真:ロイター/アフロ)

 すでに広く報道されているように、ロシアは5月9日の「戦勝記念日」に向け、国内向け「優勢」アピールを強弁するべく、ウクライナ戦線を縮小し、ブチャ大虐殺などの悪逆非道が明るみに出ました。

 この5月9日という日付は、今回の原稿で非常に重要ですので注意しておいてください。

 正確には1945年モスクワ時間の5月9日早朝2時、ちょうどベルリンで日付が変わるタイミングで、ロンドンはまだ5月8日。ナチス統治下のドイツ国軍ヴィルヘルム・カイテル元帥が降伏文書に調印した日付に、「ウクライナをネオナチから解放した」とプーチンはフェイクニュースをぶち上げたい。

 ただ実際には連戦連敗でおよそ勝利どころではない。

 そこでキーウなど中西部を含む「ウクライナ全土占領」を諦めたプーチン。東部のルガンスク、隣接するドネツク東部と、2014年強引に併合したクリミアとを結ぶ「逆L字型の黒海回廊」を奪い取ることに戦力を集中させつつあります。

皆殺し焦土作戦を指揮するドヴォルニコフ

 3月末から撤退を始めたプーチンは、4月に入ってシリア戦線で民間人に無差別攻撃を指揮したアレクサンドル・ドヴォルニコフ上級大将を司令官に任命しました。

 4月8日ドネツク州北部のロシア未占領地域、クラマトルスク駅で避難民を狙ってクラスター爆弾を打ち込んだ犯罪攻撃(https://www.afpbb.com/articles/-/3399477)は、ドヴォルニコフの命令とされます。

 ちなみにこのドヴォルニコフ、日本と目と鼻の先にある沿海州、ウラジオストク北方のウスリースクで生まれ育ちました。

 辺境の極東軍管区からモスクワ中央に引き上げられ、2015年ロシアのシリア軍事介入で住民皆殺しの焦土作戦を指揮して「ロシア連邦英雄称号」を授与、「上級大将」に出世した殺戮掃討戦の確信犯的人物です。

 ロシアはウクライナを住民まるごと焦土化、無人の焼け野原に「凱旋進駐」という「国策映画」を撮りたがっているはずです。

 その演出のために、どれだけ現地民を殺しても構わないから、ともかく「きれいに始末しろ」と、ドヴォルニコフは命じられていると思われます。

 目指すところは「5月9日 無人のマリウポリ凱旋ビデオ」の国内リリースでしょう。同じ手口は2000年2月、徹底した殺戮破壊で無人化した首都グロズヌイに「凱旋」したチェチェン略取時にも使われました。

 これに全国民的「人気」が沸騰、プーチンは2000年3月26日のロシア大統領選で過半数得票を得て権力を掌握した味を占めた前科があるのです。