ウクライナ侵略戦争ではロシア軍の意外な弱さが浮き彫りになっている(写真は数々の実戦を経験して百戦錬磨の米海兵隊=4月6日撮影、米海兵隊のホームページより)

ウクライナ戦争の影響はインド太平洋へ

中国とロシアの関係性:中国の曖昧な態度・姿勢に隠された思惑

 ウクライナ戦争の影響は、欧州にとどまるものではない。

 この戦争は、グローバルな視点からすれば「民主主義対専制主義・強権主義」の戦いであり、ウクライナは世界の民主主義国の盾となって戦っており、インド太平洋における日米台などの中国の覇権拡大に対する戦いと同じ位置付けだ。

 また、ロシアと中国は、対米・対西側で共闘する「全面的戦略協力パートナーシップ」の関係で緊密に繋がっており、中国はロシアの行動を「侵攻」「侵略」と認めないばかりか、直接・間接的に支持している。

 さらに、ウラジーミル・プーチン大統領と思想・行動の面で軌を一にする習近平国家主席は、世界覇権の獲得を視野に尖閣諸島や台湾、南シナ海で侵略的行動を先鋭化させ、「力による一方的な現状変更の試み」がインド太平洋での緊張を高めている。

 そして、武力行使に当たっては、いま注意深く観察しているウクライナ戦争の教訓が間違いなく反映されると見られるからである。

 他方、中国は、ウクライナ戦争で存在感を増した先進7か国(G7)を中心とした国際社会によるロシア包囲網が強まっていることに鑑み、ロシアへ偏重した政策は「孤立化」のリスクをはらむとの懸念から、表向き「ウクライナ問題に基本的に関与しないという態度」あるいは「どちらかの肩も持たないという姿勢」で取り繕おうとしている。

 しかし、そのような曖昧な態度・姿勢には、硬軟相交えた台湾統一を控え、それを見据えた中国の思惑と伏線が透けて見え、日米などの猜疑心をますます増大させこそすれ、減少させるものではなかろう。

中国の台湾の武力統一は不変/台湾侵攻の決意を過小評価してはならない

 米議会下院の軍事委員会は2022年3月9日・10日、ロシアのウクライナ侵略が中国の台湾侵攻計画に与える影響などに関する公聴会を開いた。

 そこで、中国専門家のイーライ・ラトナー国防次官補(インド太平洋安全保障担当)、ジョン・C・アクイリーノ太平洋軍司令官、ウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官およびスコット・ベリア国防情報局(DIA)長官が証言した。

 4氏は、まずロシアのウクライナ侵攻の国際法違反、非人道性に対する批判および経済制裁の強化について同趣旨の発言を行った。

 その後の4氏の証言を総括すると、中国がロシアのウクライナ侵攻を注視していることから、その行動に与える影響を指摘しつつも、「中国の台湾侵攻の決意は変わらない」「中国の台湾侵攻の決意を過小評価してはならない」と強調した。

 そして、米国の協力と台湾独自の努力によってその防衛力を高め、これを支える西側社会の結束した取組みがあれば、中国に対する抑止力を強化できると説いた。