ロシア産天然ガスをドイツに運ぶパイプライン「ノルドストリーム2」(2022年2月15日、写真:AP/アフロ)

 ロシアへの経済制裁は長期化の方向にある。経済制裁については世界経済への影響も気がかりではあるが、そもそもロシア経済にどのように効くのだろうか。元日銀局長の山岡浩巳氏が解説する。連載「ポストコロナのIT・未来予想図」の第80回。

 ロシアへの経済制裁は、予想通り長期化の方向にあります。経済制裁については、エネルギー価格や穀物価格の世界的上昇といった世界経済への影響も気がかりですが、ロシアにどのような影響を及ぼすのかが何より重要なポイントです。これを考える上では、ロシア経済の構造や特徴を知る必要があります。今回はITを離れ、この問題を考えてみたいと思います。

資源国の課題

 ロシアは、輸出の約半分を原油と天然ガスが占める、天然資源の輸出国という色彩の強い国です。天然資源の乏しい日本からみると、掘れば出てくる資源を持つ国々はうらやましい気もします。

 しかし実際には、天然資源の豊富な国々が常に豊かで高成長とは限りませんし、資源の乏しい国々が貧しいとも限りません。例えば、一人当たりのGDPの多さで知られるルクセンブルクやシンガポールにめぼしい天然資源はありません。一方で、かつては世界一の石油埋蔵量で知られたベネズエラはハイパーインフレで苦しんでいます。

 資源国の問題として、まず貧富の差が挙げられます。天然資源の存在は、どうしても、これを持つ人と持たない人を生みがちです。したがって資源国では、貧富の差に由来する政情不安や内戦もしばしばみられます。さらに、天然資源を押さえる立場に立つ人々による専制や独裁の問題もあります。