イタコになるために必要な免許皆伝の儀式
タケさんがイタコ修行の道に入ったのは、終戦前の1944年(昭和19年)、13歳のこと。目の不自由な娘が地域の中で生きていけるよう、両親がイタコになることを勧めたという。
そして、イタコとして地域の相談に乗るかたわら、師匠イタコとして弟子を取っていた谷川はるしの下で修行を始めた。毎日、一里を超える道のりを歩いて通った。
タケさんは2年ほどで修行を終えたが、戦後の混乱もあり、師匠上がりの儀式である「ダイジユルシ」が行われたのは1947年11月になってからだった。この時に、歴史的伝統的イタコの証であるオダイジとイラタカ数珠(イタコ数珠)を師匠から与えられた。
オダイジとはイタコが儀式に臨む時に背中に背負う竹筒、イラタカ数珠はムクロジの実をつなぎ合わせた長い数珠である。オダイジの中には、イタコが悪霊や生き霊に取り憑かれることのないよう、守るための経文が入っている。
イラタカ数珠には、猪の牙や鹿の角、寛永通宝などの古銭がついている。野獣の牙や角で装飾されているのはお祓いや悪魔祓い、おまじないなどのため。古銭は三途の川の渡し船賃である。