(大川原 通之:住宅ジャーナリスト)
新型コロナウイルスの影響が住宅業界にも深刻な影を落としている。世界的な木材高騰、いわゆる「ウッドショック」が続いていることに加えて、資材不足から住宅設備メーカー各社も、製品の値上げを決めた。
さらに、ロシアのウクライナ侵攻によって、ロシア材を使用していた国内ビルダーへの影響を懸念する声も出始めている。こうした環境の激変は住宅価格にも影響が出る可能性があり、徐々に庶民には持ち家など手の届かない状況になりつつある。
懸念されるウクライナ危機の影響
ロシアのウクライナ侵攻による木材の輸入自体への影響は、直接的にはそれほど大きくはないというのが、日本の木材関連企業の大方の見方だ。林野庁の統計では1月の木材の輸入量のうちロシア材は1割に満たないためだ。
ただし、個々の企業によって事情は異なる。比較的安い価格の建売住宅を手掛ける、いわゆる「ローコストパワービルダー」の中には、ロシア材を多く使用している企業もある。
一部にはロシア材を欧州材や北米材に切り替える動きもあるが、世界的なウッドショックが続いており、先行きは不透明。また、商社経由でロシア材を調達している企業は、SWIFT(国際銀行間通信協会)からのロシア排除によって決済ができずに、今後、輸入が困難になる可能性は排除できない。
「ウッドショック」は、新型コロナ拡大による米国の木材需要の急増が始まりだった。新型コロナの流行によって需要が低迷すると予測した米国の木材関連事業者は、早い段階で減産を実施。だが逆に、在宅時間の長期化によってリフォームやDIYを含む住宅需要が高まり、木材が品薄となったことが世界的なウッドショックへと波及した。
当然、木材需要の6割以上を輸入に頼る日本への影響は大きい。輸入材の価格上昇に引きずられる形で、国産材も値を上げている。