日本貿易振興機構(JETRO)の海外地域戦略主幹として中東のアニメコンテンツ市場の開拓を手掛ける西浦克さんは、こうコメントする。

「最後に主役のロボットが死んでしまうという『アストロガンガー』は、強い者が勝ってハッピーエンドという欧米コンテンツとは真逆の設定です。そんな意外性も反響を呼んだのだと思います」

秋葉原に直行してフィギュアをゲット

 中東で『アストロガンガー』を上回る人気を博したのが、「マジンガーシリーズ」の第3作に当たる『UFOロボ グレンダイザー』(日本での放送は1975~77年)だった。

 レバノンのテレビ局での放映をきっかけに中東一帯に広まったようだ。エリックさんによれば、シリア以外にヨルダン、イラク、エジプト、クウェートでも放送されていて、彼自身も夢中で見ていたという。

 レバノンは第1次世界大戦後にフランスの委任統治下にあったことから、『グレンダイザー』がレバノンに入ったのはフランス経由だったという。そのため『ゴルドラック』と仏版タイトルがつけられ、フランスアニメだと思われていたそうだ。

 前出の西浦さんは2014~2017年のドバイ駐在中、カフェの扉や旧市街地の壁などに描かれた“グレンダイザーアート”や、アラビア語の吹き替えを歌った声優のサイン会などを目撃している。中東の人々のグレンダイザー愛について西浦さんは次のように語る。

「ベガ星連合軍に追われて地球にやってきた主人公が、ロボットに乗って地球を守るために闘うというストーリーはとてもわかりやすく、また紛争が多い中東の国民の愛国心に刺さるものがあったのかもしれません。しかも主人公はフリード星の王子です。“王様の国”のアラブの国情とも合致しています」