『アストロガンガー』(日本での放送は1972~73年)はロボットアニメの先駆けといわれる。主人公のカンタローとロボットのガンガーが合体して、地球を標的にするブラスター星人と戦うストーリーだ。
エリックさんは懐かしそうに子供の頃を振り返る。
「夕日が沈む頃、決まって聞こえてくる歌がありました。『アストロガンガー』の主題歌です。その時間になるとあちこちの家のテレビからこの曲が聞こえてきたものです。この曲が耳に入ると、僕たちは遊びをやめて家に猛ダッシュで帰りました」
シリアの子どもたちはみんなアストロガンガーに夢中になっていたという。子どもだけではなく大人たちも熱心に見ていたようだ。
「『アストロガンガー』の最終話には、ほぼ全国民が号泣しました。正義のために戦ったガンガーがついに滅んでしまうんです。翌日の新聞には、政治、経済を差し置いて『アストロガンガー』の最終話をめぐる議論が大きく載っていました」
シリアの人々の心を鷲掴みにした理由
『アストロガンガー』がこれほどまでにシリアの人々の心を鷲掴みにした理由は何か。エリックさんは米国のアニメと比較し、日本のアニメをこう評価した。
「当時はディズニーなど米国のアニメも放送されていましたが、それらは単純に面白かったという記憶しかありません。しかし、日本のアニメはまったく違いました。正義と勇気、そして愛がありました。宗教色の強いシリアで政府も日本のアニメの放送に前向きだったのは、子どもの教育に有効だと考えたからではないでしょうか」