「パンデミック」から「エンデミック」への動き

 さらにここへきて取り沙汰されているのが、オミクロン株を感染症法に基づく2種相当から、季節性のインフルエンザと同じ5種に引き下げるべきとする議論だ。2種には結核やSARSが含まれる。感染力が強くても重症化しない、病原性が低く、それほど怖い病気ではないのであれば、それで2種であるのはおかしい、という理屈だ。

 今月11日には、日本維新の会の代表で大阪市の松井一郎市長が、オミクロン株は季節性インフルエンザより重症化率が低いとして言及し、東京都の小池百合子知事も13日に、2種から5種に下げることを検討すべき意向を示した。

 これに対して岸田文雄首相は13日、記者団に「感染が急拡大している状況の中で分類の問題を変更することは現実的ではない」と述べている。

 5種となれば、保険適用の医療費の自己負担が発生するが、それは既存の病気と同じ扱いとなる。濃厚接触者の待機も必要ない。すなわち、それこそ「収束」を意味する。

 ここへきて、オミクロン株がコロナ禍の「収束」へ向けた奇妙なバイアスを実社会の中に呼び起こしている。

 欧州でも新型コロナウイルスを「パンデミック」(世界的大流行)から、「エンデミック」(地域的流行)に引き下げる検討がはじまっている。インフルエンザのように特定の地域で普段から繰り返し発生する状態を示すものだ。