2022年の年初、ウクライナで戦争勃発が懸念されていたが、思いもよらない国で大騒乱が起こっている。中央アジアのカザフスタンだ。
カザフスタンは、人口約1900万人で、小国のように思われるが、面積は272万km2で世界9位、日本の7.3倍もある。石油、天然ガス、石炭、鉱物など、豊富な天然資源を有し、中央アジアで最大の国家である。
そんなカザフスタンで、1月2日、燃料価格の大幅値上げを発端に、全国規模で激しいデモが勃発。カシムジョルマト・トカエフ大統領は、全土に非常事態宣言を敷いて、徹底的な取り締まりに当たった。さらに8日からは、ロシア軍を中心としたCSTO(集団安全保障条約機構)の平和維持部隊を国内に受け入れ、強権的な治安維持に当たっている。
一方、カザフスタンと1500km以上もの国境を接する中国は、カザフスタンの最大の輸出相手国(昨年は第3四半期までで全体の19.9%)であり、関係は深い。そこで、カザフスタン情勢に詳しい中国の関係者に、今回の騒動の真相を聞いた。以下は、一問一答である。
背景に新旧大統領による権力闘争
――カザフスタンでの降って湧いたような混乱を、どう捉えたらよいのか?
「今回の騒乱の背景にあるのは、燃料価格の値上げなどといった単純な経済問題ではない。1991年にカザフスタンが旧ソ連から独立した時から2019年3月まで、28年にわたって初代大統領を務めてきたヌルスルタン・ナザルバエフと、2代目のトカエフ現大統領との雌雄を決する権力闘争が勃発しているのだ。
土着派で剛腕なナザルバエフ前大統領と、国際派でインテリのトカエフ大統領は、これまでも何かとソリが合わなかった。そのため、この3年近く、両者はつばぜり合いを続けてきた。ナザルバエフはそもそも、トカエフを後継者にしたくなかった。だが、トカエフはロシアと中国の後ろ盾を得て、大統領の座を射止めたのだ」