しかし、任期末に入った文在寅政権は、ここにきてなぜか康氏をILOのトップに押し上げようと必死になっている。
今年10月1日、文在寅政権は康氏のILO事務総長出馬を公式決定し、外交部と雇用労働部を中心に康氏のILO事務総長当選をサポートする政府レベルのタスクフォースを設置した。安庚徳(アン・ギョンドク)雇用労働部長官は投票権を所有しているILO56カ国の理事全員へ康氏の支持を求める書簡を作成し、世界各国に派遣された韓国外交部職員がわざわざ直接訪問して書簡を手渡ししている。外交通商部はアフリカ各国の駐韓大使を招いて康氏への支持を求める一方、崔鍾文(チェ・ジョンムン)第2次長がアフリカを歴訪して康氏への支持を要請した。さらに朴炳錫(パク・ビョンソク)国会議長はスイスを訪れ、ガイ・ライダーILO事務総長と直接会うなど、政権と与党が康氏当選に向けてフル稼働しているのだ。
国連入りのきっかけは慰安婦問題
康京和本人と文在寅政権が康氏の「強み」として掲げているのは、「人権、特に女性人権について理解が深く、国際舞台で女性人権のために働いてきた」という点だ。ここで注目すべき点は、康氏の女性人権活動の根幹は、日本軍慰安婦問題にあるという点だ。
康氏はOHCHR副代表時代だった2012年、『朝鮮日報』とのインタビューで、国連入りのきっかけが慰安婦問題だったことを明かしている。
「出発は女性の人権だった。国会議長室で国際担当秘書官を務めた1995年、北京で開かれた世界女性大会に出席したのがきっかけだ。政府とNGOが共同で結成した代表団のスポークスマンで、韓国の日本軍慰安婦問題を全世界に知らせるなど2週間、本当に楽しく働いた。そのとき初めて、自分の問題が自分だけの問題で終わるのではなく、国際社会全体の問題になり得るということ、共同議題を立て、新たな規範を作ることを国連が行うということを知った」