韓国文在寅政権で外相を務めた康京和(カン・ギョンファ)氏が今度は国連傘下の国際労働機関(ILO)の事務総長に挑戦することになった。国連人権問題担当事務所(OHCHR)の副代表など、人権分野で長い間活動してきた経歴を誇る康氏の挑戦に対し、文在寅政権は積極的なサポートを行っているが、韓国国内では「専門性に欠ける」という冷静な評価がなされている。
韓国政府が全面協力して、門外漢を国連の専門機関に送り込もうとする背景には何があるのか。
「前長官の経験やビジョンはILO事務総長の職責とは程遠い」
12月21日、100万人の会員を擁する韓国最大の労働者団体である「民主労総」は、ILO事務総長に出馬した康京和氏を支持しないという考えをILOと国際労働組合総連盟(ITUC)に伝えたことを明らかにした。康氏がILO出馬の意思を初めて明らかにした直後から、民主労総は支持を訴える彼女に対して一貫して反対の意思を表明している。民主労総は、彼女のILO事務総長への挑戦に反対する理由として、「労働に関わった経歴が全くない」ことを強調している。
「康京和前長官の経験やビジョンはILO事務総長の職責とは程遠い」
「横になる席を見て脚を伸ばさなければならない(身の程をわきまえるべき)」(12月3日の論評)
「労働現場および労使関係の現実に関する豊富な経験を持つ人物がILO事務総長にふさわしいと考えている。康前長官が労働権についてどのような考えとどんな哲学を持っているのか知らなかったため、反対・憂慮の立場を表明せざるを得なかった」(12月15日民主労総のスポークスマン)
ただ、民主労総が康氏のILO挑戦に反対する本当の理由は、「文在寅政権に圧力をかけるため」というのが、韓国の識者たちの分析だ。民主労総のヤン・ギョンス委員長は今年7月、韓国政府のコロナ防疫規則を破って不法集会を行った理由で警察により逮捕され、一審で罰金300万ウォンと執行猶予3年を言い渡された。民主労総の康氏に対する拒否は、ヤン委員長の拘束に対する抗議であり、より強力な労働改革を求める自分たちの声を文在寅政権はちゃんと受け入れろという圧迫だというのだ。