このように康氏は慰安婦問題で国連入りし、「慰安婦問題の適任者」という理由で文在寅政権で外相に起用され、外相在任期間中は国連などの多国間舞台で絶えず慰安婦問題で日本を非難してきた。その一方で、北朝鮮の深刻な人権蹂躙問題に対しては沈黙し、国際社会から反人権的な法案という非難を浴びている文在寅政権の「北朝鮮に対するビラ散布禁止法」については、「表現の自由が絶対的なものではなく、制限されることもあり得る」と主張し波紋を投げかけたりもした。

ILO総会で慰安婦問題を扱わせたい韓国

 康氏のILO進出に対して、慰安婦問題をILOで扱うための文在寅政権の布石という分析もある。慰安婦問題研究者のパク・ユハ世宗大教授は自身のフェイスブックで、「康京和前長官のILO事務総長出馬は突然のように見えるが、実は慰安婦問題と関係がある」と説明した。

〈康前長官がILOに出馬したのは、国連で慰安婦問題に関して働いた経験があるからである。当時の韓日慰安婦運動家や支援者らが、日本が「法的責任」を取るべき理由としてあらゆる論理を作り、その一つにILOの1930年強制労働協約を批准して違反したと主張したからである。慰安婦は「強制的に連れ去られて暴行被害者」と主張し続けながらも、一方では「労働」の枠組みに入れた主張も続けてきた〉(パク・ユハ教授のファイスブックより)

 1995年11月、ILOの基準適用委員会の専門家委員会では初めて、日本軍慰安婦問題が議論された。当時は民主労総の成前だったため、挺対協(韓国挺身隊問題対策協議=正義連の前身)は韓国労総を通じて、ILO理事会に慰安婦問題を提起することになった。ここでは、日本軍慰安婦がILOの第29号強制労働禁止条約違反であるという判断とともに、日本政府が早期にこれに対する補償策を講じることを希望するという意見が出された。

 しかし、その後から現在に至るまでの長い間、慰安婦問題をILOの総会の主要案件として上程するという韓国側の目標は達成できていないままだ。もし、康氏がILO事務総長に当選すれば、慰安婦問題についてILO内で決定的な役割を果たせるようになることは、容易に想像がつくだろう。

 康京和氏のILO事務総長への挑戦の裏には、慰安婦問題を巡る韓国側の複雑な利害関係が絡んでいるとみられる。