(英エコノミスト誌 2021年12月11日号)

民主主義は素晴らしい制度だが意外に脆いものだということを忘れてはならない

ほかの民主主義国は準備を始めなければならない。

 今から80年前、日本が真珠湾を爆撃した。これは重大な過ちで、世界最強の国を戦争に引きずり込み、大日本帝国を壊滅させることになった。

 先見の明があった日本の海軍大将は、次のようにつぶやいて悔やんだとされている。

「我々は、眠れる巨人を起こして闘志を奮い立たせただけなのではないだろうか」

 今日の日本は平和を好む、裕福で想像力に富んだ国だ。国家を再建したのは日本人だったが、その仕事をやりやすくしてくれたのは日本を倒した超大国だった。

 米国は、日本に資本主義的で自由な民主社会をもたらす産婆役を担っただけでなく、日本が自由に貿易を行い、経済成長を遂げられる世界秩序も作り上げた。

 この秩序は完璧ではなく、どこにおいても通用するものでもなかった。だが、それ以前にあったどの秩序よりも優れていた。

自由秩序の守護者の変節

 米国はそれ以前の大国とは異なり、圧倒的な軍事力を用いて自分より小さな同盟国を犠牲にしつつ、商業的に有利な条件を手に入れることをしなかった。

 それどころか共通のルールを設定し、ほとんどの場合において自分もそれに縛られるようにした。

 そしてこのルールに基づくシステムのおかげで、世界の大部分が戦争を回避しつつ経済成長を遂げることができた。

 残念ながら、米国は自由な秩序の守護者の役割に飽きてきている。

 再び眠りに落ちてしまったわけではないが、闘志は衰えつつあり、敵対的な国々はそれがどの程度残っているか瀬踏みをしている。

 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はウクライナとの国境付近に部隊を集結させており、近いうちに侵攻する恐れがある。

 中国は台湾周辺の空域に戦闘機を飛ばし、米国の空母の模型を作って訓練用の標的にし、極超音速兵器の実験を行っている。

 イランは核協議でマキシマリスト(あらゆる要求を掲げて妥協しない姿勢)のスタンスを取っており、協議の決裂を予想する向きが少なくない。