(英エコノミスト誌 2021年12月4日号)
新型コロナウイルスワクチンが臨床試験で最初に成功してから1年あまり経ち、恐怖感が世界の大部分を襲った。
11月24日に初めて公式に確認されたオミクロン型変異ウイルスは、ワクチン接種や過去のコロナ感染でできた免疫をすり抜けられる可能性がある。
世界保健機関(WHO)は、オミクロン株が世界的に「非常に高い」リスクになると宣言した。
ワクチンメーカーの米モデルナのトップは、既存のワクチンは多重変異したオミクロン株と戦うのが難しいかもしれないと警告した。
ロックダウン(都市封鎖)や国境閉鎖がまた敷かれ、消費者が神経をとがらせるおぞましい見通しに直面し、投資家は航空会社とホテルチェーンの株を売ることで反応した。
石油価格は1バレル当たりざっと10ドル急落し、往々にして迫りくる景気後退と関連づけられるような大幅な下げを演じた。
コロナ規制の強化が成長を阻害
本誌エコノミストが今週号で説明しているように、オミクロン株のスパイクたんぱく質に見られる35カ所の変異によって、現在支配的なデルタ株より感染力や致死性が高まるかどうかを判断するのは時期尚早だ。
科学者が今後数週間でデータを分析していけば、疫学的な状況がはっきりしてくるだろう。
だが、感染の波が国から国へと広がっていく恐れが今再び世界経済にのしかかり、すでに存在する3つの危険を増幅させている。
1つ目は、先進国におけるコロナ規制の強化が経済成長を害することだ。
新たな変異ウイルスのニュースを受け、各国は先を争うように、オミクロン株が最初に確認されたアフリカ南部諸国からの渡航者の入国を阻止した。
イスラエルと日本は国境を完全に閉めた。英国は新たな隔離義務を導入した。
パンデミックは突然、自由に世界を旅行できた時代に幕を下ろした。
今年に入ってから制限策が緩和されてきたが、過去1週間の日々は、門は開かれる時よりも閉じられる時の方がずっとスピードが速いことを見せつけた。
オミクロン株の拡大によって、国内での自由な移動の制限も強まる公算が大きい。
欧州はオミクロン株が到来する前でさえ、デルタ株の感染急増と戦うために多くの国内活動を抑制していた。