(英エコノミスト誌 2021年11月20日号)
一見すると、世界でも指折りの手腕を誇るテクノロジー投資家と間違えられるかもしれない。
中国互聯網投資基金(CIIF)のポートフォリオは、至る所に暮らすベンチャー・キャピタリストの羨望の的だ。
CIIFは、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の子会社や、ツイッターに似たプラットフォーム企業の微博(ウェイボ)の株式を所有している。
中国トップクラスの人工知能(AI)グループである商湯科技開発有限公司(センスタイム)、人気のあるショート動画アプリの快手(クアイショウ)にも出資している。
この基金の投資先リストは、さながらインターネット業界の紳士録だ。
政府による投資の仰天の条件
さらに驚かされるのは、こうした投資の条件だ。
CIIFはバイトダンス子会社の株式を1%所有するだけだが、これには中国国内でショート動画事業を展開するための重要な免許を保有する事業部門の取締役3人のうち1人を指名する権限が付随している。
ニューヨーク市場に上場しているウェイボでも同様な取引が行われており、CIIFは同社の株式1%をわずか1070万人民元(150万ドル)で手に入れている。
どちらの企業も、これ以上の資本は必要としていない。
CIIFも、米シリコンバレーの大手ベンチャー・キャピタル会社に負けない1000億元ものファンドの設立を計画しているが、既存の投資から間違いなく生み出されるケタ外れのリターンについて過度に意識していない。
なぜか。
それは、5年前に立ち上げられたばかりのCIIFが典型的な投資家ではないからだ。
CIIF自体、そのほとんどは国家インターネット情報弁公室(CAC)という強力なインターネット規制当局が所有している。
米国で言うなら、これは米連邦通信委員会(FCC)がフェイスブックやツイッターといったハイテク企業の株式を割引価格で取得し、取締役を指名したうえで、委員会が適切だと考える方向に企業を誘導するようなものだ。