(英エコノミスト誌 2021年12月11日号)
人権侵害を理由とする外交的なボイコットと過酷な新型コロナ管理がトラブルを引き起こす。
数多くの中国国民にとって、自分の国が今ほど堂々たる姿に見える時はない。
彼らにしてみれば、ますます強くなっていく近代的な祖国が来年2月4日に北京で始まる冬季五輪のような、人々の心を奮い立たせる世界的なイベントを催すにふさわしい国であることは自明だ。
時を同じくして、それとは正反対の見解が西側諸国のコンセンサスになりつつある。多くの自由主義国では、中国の指導者層は有能だが残酷だという見方が強くなっている。
高速鉄道網を国中に張り巡らしたり、月にロケットを打ち込んだりする偉業を成し遂げたことは認めつつも、耐えがたいほど抑圧的であり、とりわけ新疆ウイグル自治区をはじめとする一部の地域では民族的・宗教的少数派の抑圧が著しいと見なしている。
西側の懐疑論者にしてみれば、五輪のような壮大なイベントがそんな政治体制に取り込まれるのを見過ごすわけにはいかない。
外交ボイコットめぐる激しい応酬
こうした見方は政府の上層部からも支持を得ている。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、五輪では自国の選手を応援する有力政治家や政府高官の使節団を送るのが慣例だが、今回の北京冬季五輪については派遣を見合わせると発表し、新疆での中国政府の非情な支配――100万人ものイスラム教徒を再教育収容所に送り込んでいる――はジェノサイド(大量虐殺)に相当するというバイデン政権の立場を再度口にした。
従って米国としては中国が五輪を見事に成し遂げるのを手助けするべきではない、と言明した。サキ氏の言葉を引用するなら、「我々(米国)は五輪の派手な宣伝には貢献しない」。
その翌日にはオーストラリアも、五輪の外交的ボイコットを発表した。
こちらは中国が人権について行ってきたことと、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源について独立した調査を強く求めたことなどについてオーストラリアを罰しようと経済面で圧力をかけていることの両方を理由に挙げた。
ほかにも、英国、カナダ、ニュージーランドなどが政府の閣僚や高官の派遣を取りやめている。
こうした動きに中国側は侮蔑、怒り、検閲で対応している。