旭日旗が理由で漫画「ワンピース」の特別企画展も中止になったことも(写真:Yonhap/アフロ)

(立花 志音:在韓ライター)

 先月の話であるが、漢字の意味を間違えて解説した記者がネット上で大騒動を招いた。

 韓国の保守系最大野党「国民の力」の李俊錫代表が、大統領選挙に出馬表明した「国民の党」の安哲秀代表に「武運を祈る」と激励した話題に対して、「武運」を「無運」だと勘違いして、火花を散らしたと反対の説明をしたのだ。

 韓国語で話す場合、「武運」と「無運」は同じ発音で、両方とも「むうん」と言う。そして、ハングル表記も全く同じだ。記者は「武運」という言葉を知らなかったのだろう。

 韓国語の漢字は読み方が一つしかないため、同音異義語の熟語がとても多い。

 一番簡単な例を提示すると、韓国語で「謝罪」を意味する言葉を漢字で表すと「謝過」となり、「りんご」は「沙果」になる。だが、両方ともハングルでは「사과」と表記され、「サグァ」と発音する。

 他にも例を挙げればキリがない。それにもかかわらず、漢字を使わずにハングルのみで表記されるため、読み手は意味を文脈で判断する以外に手がない。

 武運の意味を間違って解説した記者はネット上でかなり非難され、放送局は謝罪に追い込まれた。

 だが、「武運」が分からなかったのは記者だけではなかっただろう。ニュースが流れている最中から「武運を祈る」のインターネット検索数が上がり、一日で1万5000件に達したという。ネットユーザーは記者が武運の意味を知らなかったとして非難したが、知らなかったから検索したのだろう。

 この国は自分のことは棚に上げて、他人を非難することが本当に好きだ。

 現在の韓国社会で漢字はほとんど使われていない。新聞にも、街の看板にも漢字はほとんど見られない。かろうじて地下鉄の駅名に漢字の表記があるくらいだろう。

 1970年に当時の大統領、朴正煕によって漢字廃止宣言がされた。漢字を使うと日本統治時代を思い出すからという理由だったようだ。そして、韓国人はハングル文字を世界で一番優れていると考えている。