壊れたため、あるいは架け替えで使われなくなった「廃橋(はいきょう)」。そのはかないけれど美しさを持つ光景が語りかけてくるものに耳を傾けてみよう。
冒頭の写真は、長野県小諸市の南部を流れる千曲川に架かる廃橋、「大杭橋(おおくいばし)」だ。
このような姿になってしまったのは2019年10月。東日本を襲った台風19号がもたらした千曲川の増水のためだ。このとき千曲川下流で住宅地に越水したり、新幹線車両基地が冠水したりしたので、記憶に残っている人も多いだろう。このときに、大杭橋も激流により左岸側の一部が流出して大きな被害を受けたのだ。
水害から1年8カ月たち、大杭橋はどのような姿になっているだろうか。撤去されてしまったのではないかという不安を抱えながら今年(2021年)6月に現地を訪問した。
大杭橋は撤去されず残っていた
訪問前日が雨だったため、千曲川は泥水で荒れた流れだった。その流れの中に、大杭橋はまだ残されていた。想像以上に堂々とした姿に、まだ通行できるのではないか、少なくとも多少修復すれば・・・と一瞬思わされる。が、左岸に続く橋桁がなくなり、橋の断面の露出が厳しい現実を突きつける。
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流出した橋桁や橋脚(橋を支える柱)はすでに撤去されているようだが、橋桁の一部は流されずに残った結合部分から今も垂れ下がっている状態だ。