英グラスゴーで開催されたCOP26は閉幕したが、気候変動に対する各国の足並みは揃っていない。その間にも、日々悪化する地球環境──。写真家として極地における地球温暖化の惨状を目の当たりにしてきた半田也寸志氏が、今地球で起きていることを綴った第2話。
◎第1話:「広がる花畑に唖然、北極で見た温暖化の現実」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/68040)
(半田也寸志:写真家)
ノルウエー北極圏のスバールバル諸島の西南に位置するグリーンランドでは、2021年7月末に、85億トンもの氷河が1日で溶解しました。これは、米フロリダ州全土を5cm浸水させるほどの量です。グリーンランドにおける今夏の氷河溶出の総量は、184億トンという途方もない量に上りました。
ここ10年におけるグリーンランドの氷河消失の速さがもたらす危機は以前から指摘されてきました。その危機とは、グリーンランドの氷河消失が地球の気候変動をさらに拡大させてしまうという点です。
赤道から北極に向かうにつれて冷却された海水は、高緯度にあるラブラドル海とグリーンランド海付近の深海に沈み込んだ後、再び海底をゆっくり逆流します。これは「大西洋南北熱塩循環」と呼ばれる海流システムで、大西洋の海水温の平準化に寄与しています。ところが、グリーンランドの氷河溶解で生じた大量の淡水によって、その循環が弱められているという調査結果が報告されています。
もしこのシステムが崩壊すれば、これまで高緯度にもかかわらず温暖に保たれて来た欧州の気候は今後、極端な寒冷に向かい、赤道から温暖地帯にあたる地域は極端な気温上昇に見舞われ、農業や生物の多様性にも深刻な影響を与えると欧州の科学者は口を揃えて警告しています。
この淡水の大量な流入は地球の陸と海水、氷、淡水の割合を大きく変化させています。