小田急線の座間駅。東京に通う人々のベッドタウンとして発展した

 神奈川県中部に位置する座間市。人口13万人ほどの小さな自治体だが、ある取り組みで全国的な注目を集めている。それは、生活困窮者支援だ。この20年、日本をむしばんできた格差と貧困の拡大は新型コロナによって加速している。その中で、座間市は何をしているのか。こちら座間市・生活援護課の第4話。(篠原匡:編集者・ジャーナリスト)

※第1話「『引きこもり』10年選手」から読む(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67707)

 この時に、この施策が持つ“意味”が分かった記者はほとんどいなかったのではないだろうか。

 2018年11月26日。神奈川県座間市役所で市長による記者会見が開催された。毎月1回、メディアに向けて実施される定例会見である。

 住民生活に直結する取り組みは、自治体にとって重要だ。しかし、新聞の一面を飾るようなニュースにはなりにくい。ただ、この日のテーマには、「断らない相談支援」を実践していく上で不可欠な取り組みが含まれていた。

「つなぐシート」

 役所内の各部署が情報を共有する仕組みである。

 生活に困って役所に来た住民は、どこの部署に行くべきかが分かっていないことが多い。それゆえに、最初に相談を受けた職員は、その住民の置かれた状況をできるだけ正確に把握する必要がある。

 たとえ相談の内容が「自分の業務内容とまったく違う」と思っても、そこで「違う部署に行ってください」などと言わず、住民の話をすべて聞き取り、適切な部署につなぐ。その時に、「つなぐシート」が利用される。

座間市が生活困窮者の早期発見のために活用しているつなぐシート

 名前や住所、家族構成を聞き出し、健康状態や障害、収入と支出、引きこもりの有無など15項目をチェックする。もちろん、個人情報なので、本人の同意を得た上で聞いていく。

 それから住民と一緒に、適切な部署まで連れて行く。そして、次の担当者にシートを渡して引き継ぐのだ。

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