検察官が任意保険の未加入を非難
8月27日、札幌地裁で開かれた刑事裁判を傍聴した。
この日、法廷では、遺族による意見陳述の後、検察官が被告の「任意保険未加入」について、厳しい口調で以下のように追及する場面があった。
「被告人は平成7年、自動車を運転中に被害者を死亡させて、その場から走り去った事実で罰金50万円に処せられたことがあるにもかかわらず、『自分が人を巻き込むような事故を起こすことはないだろう、半年くらいしか乗れないのに、わざわざ任意保険をかけるのはもったいない』という、安易、身勝手、かつ自己中心的な考えで任意保険に加入しておらず、遺族に対する早期かつ十分な賠償がなされる見込みがない」
驚いたことに、この被告人は今から26年前にも車を運転中に死亡事故を起こしていたというのだ。
しかも、その事故は「真冬の札幌市内でのひき逃げ」という極めて悪質なものだった。
人生二度目の死亡事故・・・。この事実を知ると、2年の禁錮刑ではあまりに軽すぎるのではないかとも思うが、刑法の「累犯の規定」によれば、仮に前の事故が罰金刑ではなく実刑であっても、刑を終えて5年経てば前科は問えないとのことで、今回の判決文にも、以前のひき逃げ死亡事故については一切触れられていなかった。
とはいえ、過去に死亡事故を起こした被告自身が、「自分が人を巻き込むような事故を起こすことはないだろう」と述べ、「北海道は雪で1年のうち半分くらいしかバイクに乗れないので、任意保険はもったいない」という考えで、これまで乗り継いだバイクや、事故時に所有していた2台の大型バイクには一度も任意保険をかけてこなかったというのだ。
バイクの任意保険は、クルマよりかなり安く、年間数万円で加入することができる。被告はその数万円という保険料を「もったいない」と払い渋ったがために、交通事故としては極めて重い「実刑」という刑罰を受けることになった。そして、被告本人だけでなく、妻や子どもたちの人生にも大きな苦しみを与えることになったのだ。