しかし、判決文はこれで終わりではなかった。被告を異例の実刑にした理由について、次のように述べられていたのだ。
『被告人が任意保険に未加入であったため、十分な損害賠償がされる見込みはない。そうすると、強制保険が遺族に支払われたことなどを考慮しても、本件犯行に関する事情は悪質であり、刑の執行を猶予する余地はない』
実は、被告人はこの大型バイクに任意保険をかけていなかったのだ。
大型バイクに乗りながら任意保険未加入とは
自賠責保険の「傷害」部分に支払われる保険金は120万円が上限だ。しかし、重傷事故の場合、この程度の金額では全く足りない。
実際に、この事故で亡くなった被害者の場合、救急搬送された救命センターで緊急手術を受け、大量の輸血が行われているが、亡くなるまでの15時間にかかった総医療費は658万1540円だった。
また、被害者が死亡した場合は、損害賠償として逸失利益や慰謝料などが積算されるため、50代男性の場合は自賠責保険だけでは到底足りない。そこで、そのオーバー分を補うためにあるのが任意保険だ。
筆者自身、長年大型バイクに乗ってきたが、任意保険をかけずに乗ったことは一度もない。それは、万一自分が加害者になったとき、被害者への賠償を自力で行うことは不可能だからだ。
妻子があり、会社勤めをしている社会人でありながら、被告はなぜ、総重量300キロを超えるような大排気量のバイクに、任意保険をかけずに乗ることができたのだろうか・・・。