アフガニスタンからの米軍撤退より米国人にはもっと気がかりなことがある

午前零時1分前の後味の悪い敗走

 ジョー・バイデン米大統領は8月31日、国民向けに演説した。

「20年に及んだアフガニスタンでの米軍駐留は終わり、2001年以降続いたアフガン戦争は終結した。撤退は正しく賢明で、最大の決断だった。撤退は類まれな成功だった」

 本来なら、自らの手で「米史上最長の戦争」に幕を引けたことを高らかに謳い上げるところだったが、米国民がテレビの映像で見た修羅場はそれを許さなかった。

 最後の最後に自爆テロにより若い米兵やアフガン市民の尊い命を失う無様な幕切れを「類まれ成功」とはお世辞にも言えなかった。

 8月31日付のロサンゼルス・タイムズは一面の見出しでこう書きなぐった。

「Bitter end to U. S. longest war: Final pullout, one minute to midnight leaves aftertaste of defeat」(米国史上、最長の戦争の苦い幕切れ:ミッドナイト1分前のアフガン撤収は後味の悪い敗走)

 バイデン氏が何と言おうとも、それがすべてだった。

 だが、ドナルド・トランプ氏が今も大統領だったとしても同じような結果に終わっただろう。

 すでに崩壊していたアフガン政府はもとより、トランプ氏が撤退取引をしていたタリバンも、ライバルの過激派ISIS-Kの「凶暴さ」を抑えるだけの武力も権威も備えていてはいなかった。

 米国民の8割は一日も早いアフガンからの米軍撤収を望んでいた。

 本音を言えば、米軍が去った後アフガンがどうなるのか(アフガン女性がどうなるのか、米国式文化に染まった市民がどうなるかなど)米国民にとってはどうでもよかった。

 ただ、米メディアはしばらくは、幕切れの後味の悪さをなじるだろう。