「日本は再エネ適地が少ない」は本当か?

 こうした話をするとすぐ、「サウジと日本は全く環境が違う」、「日本は国土が小さく山がちで、再エネ適地(太陽光や風力を立地できる場所)が少ない」との反論が出てくる。

 もちろん国土面積や地形の違いは明らかだが、印象論に引きずられてはいけない。発電設備は送電線でつながないといけないので、サウジの国土がいくら巨大でも際限なく使えるわけではない。逆に、いかに日本の国土が小さいといっても、有効利用されていない土地はたくさんある。

 例えば、日本には、耕作放棄されて荒れ果てた荒廃農地は28万haある。ここに太陽光を導入すれば230GWのポテンシャルがある。住宅の屋根おき太陽光のポテンシャルは210GWだ。これに対し、基本計画の「再エネ36~38%」の内訳は太陽光100GWに過ぎない。実際には荒廃農地と住宅を有効活用するだけでもはるかに大きなポテンシャルがある。ほかにも、農地を利用しつつ上部に太陽光パネルをおく営農型太陽光など、さらに大きな可能性が眠っている。

 太陽光というと「山林を切り崩して土砂崩れの危険を起こしかねない、景観を壊しかねない」といったイメージが強いが、そんなところにパネルを置く必要はない。問題はこれまで、悪質な事業者による不適切な開発事例が少なからずあったことだ。これは必要な規制設定が行われていなかったためだ。厳格な規制を導入し、不適切な開発はしっかり取り締まることが課題だ。

 風力に関して、日本は欧州のように安定した偏西風が吹かないから適地が少ない、との指摘もある。こちらも、印象論に引きずられてはいけない。実際には、日本で年間風速7m以上の洋上風力のポテンシャルは240GWある。今回の基本計画では、2030年にわずか3.7GWだ。本当の課題は、適地が少ないことではなく、漁業権の調整などに多大な時間を要していることだ。

「再エネを増やすと、電力料金がとんでもない水準になる」との指摘もある。しかし、世界の多くの国で再エネ比率を高めようとしている中で、日本だけが克服不能なのか。太陽光のコストを国際比較すると日本はたしかに高いが、内訳で特に高いのは工事費だ。その要因は何だったのか、市場の競争環境に改善余地がないのか。

「日本に再エネ適地は少ない」、「電力料金が上がる」といったマジックワードは、本当の課題を覆い隠してしまう。本当の課題を解決していけば、「再エネ36~38%」は決して限界の数値ではない。