テロ対策未完の原発は運転停止へ、期限延長認めず 原子力規制委

九州電力の川内原子力発電所の原子炉容器(2015年7月7日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / KYUSHU ELECTRIC POWER 〔AFPBB News

 7月26日付けロイターによると、①東京電力は柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)の安全対策費として約1.2兆円を要すると試算、②これはテロ対策施設など原発の新規制基準への対応費用が大きく増えたことが要因、③従来の約6800億円から倍増という。

 原発の安全対策費は全国の原発でも増え続けており、再稼働が進んでいる関西電力で1兆円、九州電力で9000億円を超える。新規制基準が再稼働に巨額の費用を強いていることが改めて浮き彫りになっている。これはやがて、電気料金への上乗せによる一般消費者の負担増として跳ね返ってくる。

「結論をひたすら先送り」が日本の原発行政

 こうした事態は、筆者には、新規制基準を運用する原子力規制委員会・原子力規制庁の暴走にしか見えない。予見可能性のない非合理的な規制強化によって、膨大な国富が年間数兆円規模で現実に失われている。これは消費税率1%の税収(2〜3兆円)を超える水準だ。

 規制委員会と規制庁は、原子力事業者(そのほとんどは大手電力会社)に対して、ただただ厳しい態度で臨んでいれさえすれば大衆世論の支持が得られると勘違いしているのではないか。本来であれば原子力規制を世界標準に合わせた合理的なものにすべきと筆者は考えるが、そのように規制基準を転換しようという動機は、そもそも規制委・規制庁には微塵もないのだろう。加えて、行政訴訟で負けるのを恐れるあまり、審査の「牛歩戦術」をひたすら展開し、結論を先送りしている。それが日本の原発行政の実態だ。

 それに対して政治はどう向き合っているのか。政府・総理官邸も、「世界で一番厳しい基準をパスした原発は再稼動させる」と通り一辺倒の発言メモを毎度読み上げるだけで、自分から主体的に動こうとはぜず、規制委(学者の集まり)・規制庁(官僚組織)に丸投げを続けるのみ、という有様だ。

 そのような状況下にある規制委・規制庁には、原子力によるエネルギーの安価安定供給機能や、化石燃料ゼロで再生可能エネルギーにも限界のある日本のエネルギー安全保障を重々考慮した規制運用を期待することは全くできない。