*写真はイメージ

 39歳でステージ4の乳がん治療中の薬剤師Tさんには、がん治療以外にも大きな不安がある。学生時代に借りた奨学金のことだ。闘病しながら返済を続けることができるのか。そして、もしも返済途中で死んでしまったとしたら残額は保証人である年老いた両親にのしかかってしまうのか——。

「死ぬのは完済してからにしてね」冗談を飛ばす母

 Tさんは私立大学の薬学部に入学した際、大学独自の奨学金制度と共に日本学生支援機構(当時は日本育英会)から貸与型奨学金480万円を借りていた。卒業後返済を続けてきてはいるが現時点で残額は約94万円。完済予定日まであと3年7カ月だが、病気のことを考えると返済を続けられるか自分でも分からないという。

「奨学金があったからこそ進学できましたし、薬剤師になるという夢も果たせました。だからこそ借りたお金はきちんと返したいという気持ちはありますが、いつどうなるかわからない状況でもあります」(Tさん)

 現在はフルタイム勤務ができているので利息込み2万1859円を毎月返済しているが、医療費は高額療養費制度の限度額適用認定を受けていても月に約13万円かかることもあった。この先、体調によっては時短勤務になったり、入院等で休職が増えれば収入が大きく減ったりする可能性がある。病状が悪化すれば仕事に戻れないことはもちろん、死も覚悟している。

 今でこそ「(死ぬのは)完済してからにしてね」と冗談を飛ばすTさんの母だが、ステージ4の診断を聞いた当時は、奨学金返済中に亡くなったがん患者の親が、子が亡くなった後も返済を続け、「毎月の引き落としを見る度に辛くなる」というブログを見て、ショックを受けていたという。