いずれにせよ今回の措置には、韓元局長のような政府批判の発言を許さないという文政権の確固たる意志が反映されている。これでは政権内部での自由、闊達な議論は望めず、より効果的な政策実現の機会も失われていくことになるだろう。

 さらに与党が推進する「言論仲裁法改正案」が成立すれば、韓国ではますます政府批判が難しくなる。言論の自由のない暗黒国家になってしまうだろう。

文大統領への批判は「不適切行為」

 韓国の「暗黒国家化」は冗談でもなんでもない。文在寅大統領は自身に対する批判には猛然と噛みつくのだ。

 次期大統領選に野党「国民の力」の有力候補となっている崔在亨(チェ・ジェヒョン)前監査院長が、メディアから突如として「親日派」のレッテルを貼られ、苦境に立たされた。「親日」の根拠は、崔前院長の祖父である崔ビョンギュ氏(故人)が1937年に朝鮮総督府の地方諮問団体である江原道会(江原道議会に相当)議員に出馬して落選した後、1939年に旧満州国の牡丹江省海林で朝鮮居留民団団長を務めていたことだという。

 これに対し、崔前院長は「特定の職に就いていたからといって親日と定義することはできない。そのような論議ならば農業係長をしていた文在寅大統領の父親も親日派論議から抜け出すことはできない」と応じた。

 この崔院長の発言に対し、文大統領サイドが猛烈に噛みついた。大統領府青瓦台の朴ギョン美(パク・ギョンミ)報道官は10日の会見で「崔前院長が、文大統領の父親が興南で農業係長をしていたことも親日派論議から抜け出せないと言及した。崔前院長側が本人の議論を釈明しながら大統領を引き込んだことは大統領候補として非常に不適切な行動であることを肝に銘じるよう望む」と述べた。報道官の発言は大統領の指示に基づく発言だという。