「文政権は国を滅ぼすようなことばかりをやっている」

 また韓氏は「中央日報」の取材に対し、「文政権が国を滅ぼすようなことばかりをやっていると判断した。大きく3つあった。中小企業従事者を死地に追い込む所得主導成長政策、役に立たない反日扇動、産業を殺す脱原発が最も間違っていると考えた」という。

 韓元局長の言い分は、筆者が聞いても至極まっとうな内容である。決して虚偽・偽りを述べたわけでもないし、機密情報を流出させたわけでもない。自分の良心に従い自身の意見を述べたまでだ。それで懲戒罷免されるというのは、あまりに行き過ぎた措置だと思う。

 韓氏を罷免した人事革新中央懲戒委員会によれば、懲戒処分を行った理由は国家公務員法で定められた誠実義務と品位維持義務への違反だという。しかし、韓氏によれば、2017年に同部の書記官(筆者注:課長クラス)以下の後輩へのアンケート調査の中で〈最も望ましくて真似したい管理者〉に韓氏が選ばれたのだという。韓氏は「品位維持義務違反は言いがかりに近かった」と述べている。

 もう一つの「誠実義務違反」のほうは、要するに「政府の言うこと、やることを批判するな」という趣旨であろう。

 韓氏は昨年8月から中国の孔子学院の実態を知らせる運動本部の代表として、中国の文化工程を批判する市民運動をしている。これが文在寅政権の逆鱗に触れていた可能性もある。

 一般論でいえば、公務員が時の政権を露骨に批判することの是非の問題はある。批判したければ退職してから批判すればいい、という意見もあろう。ただ、韓元局長が批判したのは自身の関与しない問題であり、あくまでも個人的な意見と見ることもできる。

 進歩派系の観点からの政府批判は労働組合が守ってくれる。政府の不正行為に対する内部告発は世論が支持してくれることもある。しかし、政府の政策について、中央省庁の幹部が公に批判することは認められない、と考える政権中枢の人間も多いだろう。だとしても、罷免はやりすぎだ。