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米国CIA(中央情報局)は局員の聞く能力を伸ばす訓練をするよりも、もともと聞き手として優れた人を採用することに注力しているという。「使える情報を出してもらうには、辛抱強く時間をかけて、よい聞き手になるしかない」と、CIAの元尋問官は語る。(JBpress)

※本稿は『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。

道を誤る瀬戸際にいる人を理解するには

 ワシントンD.C.にあるフォーシーズンズ・ホテルのバーで、バリー・マクマナスは、部屋全体をさっと見渡し、そこにいる全員を頭に入れ、人物像を見定めました。

 これは、マクマナスがアメリカのCIA(中央情報局)で26年間働くうちに身についた習慣です。身なりのきちんとした、アーモンド形の目のアフリカ系アメリカ人のマクマナスは、どの国籍にもなりすませそうな外見をしています。そして実際、なりすましてきました。

 CIAの主席尋問官やポリグラフ検査主席として、マクマナスは140カ国をまたにかけ、テロリスト、爆弾製造係、麻薬の売人、内通者などの話を聞いてきました。さまざまな人の命が、彼の聞く力にかかっていました。

「バックグラウンド・チェックでは、その人物が過去に何で捕まったかしかわかりません。私の仕事は、その人物が過去にやったけれども捕まらなかったのは何か、そして将来何をやりそうか見つけ出すことです」。そのために、彼は落ち着ける場所で話を聞きます。

 CIAの局員は、情報を得るために、他者を巧妙にだましたり、食いものにしたりするのもいとわないよう訓練されています。しかしマクマナスの腕の良さは、そのような恐ろしそうなスキルから来るものではありません。