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サン・ファン・デル・バレ聖母大聖堂には、何千人もの人が押し寄せる。人々は告解という形で話を聞いてもらいに来ているのだ。「この世界では、聞くことが危機におちいっているのだと思うようになった」と教会の神父は言う。(JBpress)

※本稿は『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』(ケイト・マーフィ著、篠田真貴子監訳、松丸さとみ訳、日経BP)より一部抜粋・再編集したものです。

告解を求める人たちが急増した教会の不思議

 国境の町テキサス州サン・フアンにあるサン・ファン・デル・バレ聖母大聖堂を特徴付けるのは、何千人と続く教会への人の流れです。

 キャンドルを灯し、おそなえ物をするためにやって来た人々もいますが、いちばん長い行列は告解室へと続くもので、まるで空港の保安検査場へ向かう行列のように、きれいなS字になっています。

 司祭たちは6つある告解室を常にローテーションで担当し、3時間シフトを最長で1日12時間こなし、誰を追い返すこともせずに、時間を延長して人の話を聞き続けます。

 丸い顔だちをしたホルヘ・ゴメス神父は、若くしてこの大聖堂の主任司祭を務めています。

 近年、カトリック教会の聖職者による性的虐待のスキャンダルが続き、多くの信者がカトリック教会から離れていきました。それにもかかわらず、告解を待つための行列は、週を追うごとに長くなっているようだとゴメス神父は言います。告解を希望する人の急増を、どう受けとめていいかよくわからないとも口にしました。

 より罪深い社会になったとか、人が自分のしたことに罪悪感をもっと抱くようになったというわけではないと、神父は考えています。実は、告解に来て罪の話をする人はほとんどいません。中にはカトリック教徒でない人さえいます。